5.1さらうどん

@giginetの技術ブログ。ゲーム開発、iOS開発、その他いろいろ

ハル研究所のインターンシップに参加してきた話

ハル研行ってきた

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11月28日、『カービィ』や『スマブラ』でおなじみのハル研究所インターンシップに参加して、小さい頃から憧れだったハル研究所の山梨開発センターに行ってきました!!!

ハル研究所インターンシップ : HAL LABORATRY, INC. INTERNSHIP SITE 2014

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きっかけ

Twitterを見ていたら「今年のハル研プログラミングコンテストに上位入賞すればインターンに参加できるらしい」という情報が流れてきました。

ハル研究所 プログラミングコンテスト2014

僕は競技プログラミングはゆるふわ勢。やれば楽しいから好きだけど、熱心に追ってる方じゃないし、毎週何らかの大会に出ている競プロ勢の足下にも及ばない。 3~4年前はICPCICFPGoogle Code Jamなんかをかじってはいたけど最近はやっていないから数年のブランクがありました。

僕は競技プログラミングに興味があるわけじゃないけど、ハル研には行きたい! 順位とかどうでもいいからインターンに参加できる程度には食い込みたい!そんな不純な目的でプロコンに参加しました。

プログラミングコンテスト2014

ハル研のプロコンには20年の歴史があるようですが、今年のプロコンは上の図のようなマップを動く忍者のAIを実装する問題。

ハル研究所 プログラミングコンテスト2014|問題

  • ランダムなステージが与えられます。ステージ中には0から順に番号が振られたハスの葉があります(図の緑の円)
  • 自分の忍者(図の青い円)のAIを記述し、蓮の葉を数字の順番に循環しましょう
  • 忍者は停止するか、ダッシュするの2つの行動を選ぶことができます。ただし、ダッシュする回数には制限があり(円に書いてある数字)、回数は一定時間で回復します。
  • 無事に3周できたらステージクリア!クリアまでのターン数がスコアになります
  • 先輩忍者という名の敵キャラ(他の円、NPC)がいて、全ての忍者に負けてしまうとステージクリア失敗。1位になることで大量のスコアが貰えます

いろいろルールがあるけれど、やることは

  • 周りの状況に応じて、毎ターンどこにダッシュするか、もしくは止まるかを選択
  • とにかく早くゴールしろ

という超シンプルな問題です。実装はC++でメソッドを2つ実装するだけ。簡単。

コース取りを考えるのはもちろんだけど、この問題のキモは「ダッシュを如何に効率的に使うか」という点に終始します。

このゲームの「ダッシュ」は要は使用制限が決まってるマリオカートのキノコ。キノコを連発しても最高速度はこれ以上上がらないので無駄だし、速度が落ちてきたタイミングで効率よく使う方法を考えていくのが超重要。

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プロコンで僕が取ったアプローチは省略。結局、3週間程度の開催期間のうち、2~3日、10時間程度を費やし、最終的に20位ぐらいにまで入りました。 僕の周りはスコアが過密地帯だったので、最終結果は細かく変動するだろうし、インターンに行けるか微妙だと思っていたけど無事に当選。山梨へ行ってきました。

憧れの竜王町

当日11月28日。朝6時に札幌の自宅から出て、地下鉄、JR、飛行機、モノレール、特急、タクシーと乗り継いでハル研オフィスへ!遠かったー。

初めての甲府

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ハル研ファンからすると、竜王町は『スマブラ』の初期プロトタイプである『格闘ゲーム竜王』の由来になったところ。いわば『スマブラ』の聖地なわけですね。今は竜王町とは言わないみたいだけど・・・・・・。

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ハル研の社屋は甲府駅から車で20分ぐらい。ウワサには聞いていたけどのどかなところでした。

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プロコン表彰と講評、エキシビジョンマッチ

まずはプロコンの表彰式と講評、上位入賞者のプログラム解説

講評についてはブログ記事に書こうと思って一生懸命写してきたのだけど、Webに当日と同じ講評が上がっていたのでそちらを参照のこと。

ハル研究所 プログラミングコンテスト2014|結果発表

なにか劇的なブレイクスルーがあるかと思いきや、「その発想はあった」というモノがほとんどで、考え方という面ではトップレベルも十分狙えたと思う。

要は先ほども書いたダッシュのタイミングを細かく探索して効率化していくべき、という話。

しかし、模範解答である、最低速度からダッシュの利用タイミングをシミュレートして実行するという発想には至り、僕も実装したものの、 ただ単に、考えられるパターンを時間の許す限り試行しているだけの僕のコードに対し、上位入賞者は動的計画法や二分探索を採用したりで、如何にも競技プログラミングっぽいアプローチで解を求めていて、格の違いを見せつけられた。

上位入賞者といえども、特殊なことをしているわけではなく、いろいろと考えられる理論を丁寧に確実に実行した人が上位に食い込んでいた。 特に、優勝者の方は「ハスの間ごとに利用回数が増えない範囲で加速すべき最高速度を探索する」という丁寧な感じのアプローチで、解説は非常に参考になった。

そういう面で、特殊な数学的知識がなくとも、発想があれば十分戦えるという非常に良い問題だったとおもう。

僕は20位で入賞ならず。サブミット時より最終スコアは下がってしまったけど、思ったより順位は良かった。 言い訳をすると、このぐらいの順位でインターンには行けるだろうと考えて、最後の1週間ぐらいは手を止めていたけど、仮にもっと時間を掛けてももう上がらなかっただろうなあ。

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インターンに参加できるのは上位15名程度という話だったけど、実際、1位も2位もインターンに来ていなかったり、20位以内に食い込んでいなかった参加者も相当数いたので、おそらくインターンに参加するだけなら3900000ぐらい、上位30位ぐらいでも狙えたのではないかなあ。

最後に、エキシビジョンマッチと称して、通常はAIが相手のこのゲームを参加者のAI同士で戦えるようにしてビジュアライズするという企画。ハル研らしくカービィグルメレースの曲にあわせ、非常に白熱した試合となった。

予告なく敵の仕様や周回数などのルール変更されたので、敵AIに最適化した回避方法を実装していたり、周回数をハードコードしていたAIが意図通り動かなかったりしてなかなかおもしろかった。

社内見学ツアー

社内見学ツアー。開発室は仕方ないとして、他にいろいろ見れるのかと思ったら社内をぶらっと回って5分程度で終わりだった。

雑談しながら開発室を入り口から眺めたのと、富士山が一望できる展望室を見ただけという感じ。

サウンドコンポーザ用のブースが併設されていたのが印象的。仕事しやすそう。

あと、社内には歴代のカービィグッズが勢揃い。カービィファンにはたまらなかったですね。

当然社内の写真を撮ることはできなかったのですが、ハル研究所の公式ページに相当古いモノと思われますが、社内ツアーが掲載されているのでご覧になってみては。

ハル研究所ウェブサイト:HAL LABORATORY, INC.

社員さんとの交流会

最後に軽食と共に他の参加者や社員さんと交流会。

僕は前述の通りファンボーイなので、他の学生との交流はそこそこ、会社の事情とかいろいろ突っ込んで聞いていた。

特にベテランのプログラマの方がいらっしゃって、桜井政博さんや岩田聡さんが現役だった頃の話をいろいろ聞けたのがものすごく収穫だった。

桜井政博と一緒に仕事をするにはどうすればいいか、とか、『MOTHER2』に関わっていた方が岩田社長の伝説の名言は実話だったという話が聞けたり。感激だ。

プログラマー・岩田聡の“伝説的エピソード” 「MOTHER2」復活対談で裏側明かす - ねとらぼ

あと伝説の64版『MOTHER3』に関わっていたときの話や、ボツになった3Dカービィシリーズの話など、社外に出ない話をめっちゃ突っ込んで聞いていたのでマジで迷惑な学生だったと思う。お答え頂きありがとうございました。

ハル研に行く用事がある方がいれば、この記事を読んでから行けば良いと思う。

『MOTHER 3』の開発が中止になったことについての 糸井重里・岩田聡・宮本茂の座談会

話して思ったのが、やはり技術者を大切にしている会社だなあと言う印象で、取締役レベルの人になっても元エンジニアで、最近のゲーム開発環境にも明るい。 あと、社風も凄く優良企業っぽい感じだった。良い会社だ。

その後

インターン自体は18時には終わり。わずか4時間だったけど、非常に濃密な体験でした。

そのあと、他の参加者と一緒に飲みに行って、競プロの話などが聞けて視野が広がった。

参加して思ったこと

インターンに行ってみて思ったのが、まず大分客層が違ったなあと言う感じ。

僕のように純粋にハル研ハル研の作品が好きで、中身を見たくて観光気分で来た人はあまり多くなかった。 また、僕のように趣味ゲーム開発者というのもほとんどいなくて、多くはやはり競技プログラミングへの参加を趣味としている学生さんが多い印象だった。

もちろんハル研好きな人もいるんだろうけど、たまたま道中で一緒だった人に聞いてみたら、「別にカービィとか遊んだことないし、ゲームもあまりやらないけど競技プログラミングは好き」みたいな層が多かった。

それと、行く前から薄々感じていたけど、一般的な採用を目的としたインターンシップとは全く違ったなあと言う感じ。

インターンシップ応募に必要なのはプロコンのスコアと、事務的な情報だけ。他は何も聞かれなかったし、面談などもなかった。

僕みたいに観光気分で来て、就活生でもないのに凄く良くしてもらえて、札幌から山梨まで交通や宿泊までいろいろ手配してくれたりと、逆に非常に申し訳なさを感じた。

プログラミングコンテストの表彰式という側面で見ると、国内有数の競技プログラミングのガチ勢みたいな人が一堂に会していて非常に成功していたと思う。 インターンだけではなく、プロコンの運営も、問題プログラムの作成から、評価環境の整備、講評の準備など大変手間がかかってるなあという印象で、こういうイベントを主催して学生を支援してくださるハル研の方には頭が上がらない。

ハル研究所 プログラミングコンテスト2014|プログ

まとめ

こんな感じでした!

本当はもっと山梨観光とかしてきたかったけど、飛行機の時間なども決められていたため、ほとんど移動だけで終わってしまった。残念!

帰りについでに石和温泉にでも入ってから北海道に帰りたかったー。

山梨っぽいモノも何も食べたりできず、帰りにお土産と駅弁買ったくらい。次に山梨に行く機会はあるのだろうか・・・・・・。

あと、競技プログラミングエンジョイ勢の僕が言うのもおかしな話ですが、競技プログラミングは楽しいので是非とも皆様ご参加ください。

ガチでやってる人から比べると足下にも及ばない感じだけど、経験があるのとないのとでは大違いだなあと感じています。今回のプロコンも、昔出てたICPCICFPなんかの地力があったからこそというモノ。

年に1~2回レベルだったとしても未経験の方には是非とも経験して欲しい!

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