9/19から行われたiOSDC 2025に参加してきた。今年は10回目の開催で、僕も過去10回皆勤だが、今までブログを書いたことがなかった。今回は参加ブログを書いてみる。
トーク - 「Swiftビルド弾丸ツアー - Swift Buildが作る新しいエコシステム」

今年は2月にオープンソース化されたSwift Buildについて解説するトークをした。
iOSDCでのトークはおそらく3年連続7回目。毎年今年はもうCFPを出さないと心に決めるが、1年経つと準備を辛さを忘れて出してしまう(そして毎回準備で炎上して後悔する)。
セッションルームAという、例年と比べても最大規模のホールに割り当てていただき、ありがたいことに体感部屋の8割ぐらいが埋まる大盛況となっていた。みなさんそんなにビルドに興味があるんですね。
話します!!!ハコでかい! #iosdc #a pic.twitter.com/G9vxL3ukkr
— giginet (@giginet) September 20, 2025
内容としては、基本から網羅的にビルドシステムの動作を学べるセッションにした。「弾丸ツアー」というタイトルの通り、CFPの段階で、詳細に踏み込まずに、あくまでビルドシステム全体を俯瞰的に浅く広く触れようというコンセプトだった。
いざまとめてみると、ビルドの詳細部分についてかなり簡素な説明になったり(リンカとか)、フォーラムに書いてあることを要約しただけじゃないのか、という内容に感じたが、結果的に好評をいただけたので上手くいったと思う。
トーク内では特に触れなかったが、世の中では「Swift Buildがあれば、Mac不要でiOSアプリが作れる!」というセンセーショナルな内容が喧伝されがちだったが、結果的に中身や役割を詳しく説明することで、これらの記事のアンチテーゼとなったのではないだろうか。ここまで詳細に調べて記事を書いたりしている人もいないだろうし・・・・・・。
スライド
みなさまの声
Forteeからまだフィードバックを募集しているので、ぜひこちらからお寄せいただけると嬉しい。
giginetさん「Swiftビルド弾丸ツアー - Swift Buildが作る新しいエコシステム」を聴きに来たのです #iosdc #a pic.twitter.com/TtokA05Hv9
— Kosuke Ogawa ᯅエンジニア (@koogawa) September 20, 2025
ビルドのなんの話をするのか知らないけれど、いつもとても楽しいお話していただけているので聴いている。#iosdc #a
— 佐藤 俊輔 (@ushisantoasobu) September 20, 2025
— h1d3mun3 (@h1d3mun3) September 20, 2025
Swift Buildのオープンソース化、かなり革命っぽいな #iosdc #a
— ras0q (@ras0q) September 20, 2025
あの分かりやすい build path の図を壁に貼っておきたい #iosdc #a
— pihero (@pihero13) September 20, 2025
わかりやすかった Swift Build気になってたのでとても助かる #iosdc #a
— 🐊𝕏 (@alligator_tama) September 20, 2025
ビルドシステムの図が分かりやすかった🛠️ いろんなビルドツールが使われてるんだな #iosdc #a
— 𝘮𝘢𝘳𝘶 (@marunomi_) September 20, 2025
ツールチェーンのオーナーがllvm foundationとswiftの両方から来ているのもちょっと複雑。llbuildはswift側なのかな? #iosdc #a
— 鈴木 剛(Takeshi Suzuki) (@tockrock) September 20, 2025
印象に残ったトーク
例年は、人と駄弁っているのが中心であまりトークを聞いていないことが多かったので、今年は意識的にトークを聞きに行く時間を増やしてみた。面白かったトークをいくつか。
作って学ぶWebP入門
id:KishikawaKatsumiのトーク。Swift固有の話は少なかったが、RFCやlibwebpを読まなければわからなさそうなWebPの仕様がわかりやすく解説されていた。
WebPはわりとモダンなフォーマットだけあって、最適化手法など人類のヒューリスティックの叡智という印象を受けた。このゴツい仕様を実際に動くところまで実装したのは頭が上がらない。
大規模アプリにおけるXcode Previews実用化までの道のり
同じチームのid:ikesyoのトーク。一緒に取り組んでいるLINEのXcode Previewサポートの話をまとめてくれた。
去年僕が話したMergeable Libraryのトークの段階では机上論だったが、またそれと違ったアプローチでXcode Previewを実用段階にしていく様が語られていて、大規模アプリでなくとも役に立つこと請け合い。
同じ研究テーマが引き継がれているようで感慨深い。可能ならば来年は僕も業務に根付いたトークをしたい。
列車行程追跡アルゴリズムを書こう
元同僚のChrisのトーク。リアルタイムに乗車している鉄道路線を同定する個人アプリ開発の話。日本の鉄道固有の複雑すぎるドメインを泥臭く解決している。アルゴリズムの話としても、個人アプリ開発の話としても面白かった。「できました〜!」→「できてませーん」の流れを繰り返していて、英語圏でも「天丼」ってあるのかななんてことを考えていた。
Apple Vision Proでの立体動画アプリの実装と40の工夫
Apple Vision Proの権威、@shmdevelopさんのトーク。try! Swift 2025のトークの続編と言った内容。AVPアプリを開発する上でのユーザビリティ、設計思想やマイクロインタラクションの工夫について扱われていた。
チュートリアルの設計や、アニメーションのUXを上げるための細かな工夫はゲーム開発的。まさに神は細部に宿るを体現していた。
iOSDC 2025総評というか感想
10年も参加していると、トークの傾向から、界隈のトレンドや「環境」のようなものがなんとなく読み取れるようになる。 一時期流行っていたアーキテクチャやUI開発のトークは、なりを潜め、ハードウェアやあまり話題にならないフレームワークにスポットを当てるテーマ、OSの独自機能などの話が多くなった印象を受ける。
また、例年、企業色の強いトークは採択されづらい傾向にあり、*1、施策やサービス固有のドメインに関するトークはしづらいので、特定の技術領域にフォーカスせざるを得ないのも一因にあると思う。これはスポンサーセッションとの兼ね合いという運営都合で仕方ないところもあるが、どちらかというとサービス開発の泥臭い話こそが共有する価値が大きいようにも思う。宣伝っぽいのが増えてしまうと困るから難しいところだけど。
iOSDCは独自の採択基準を貫いていて、安易にAIのようなトレンドに流れていないのは運営の強いメッセージ性を感じて良い。当初は物足りなくも感じたが、実際にはClaude Codeについてのディスカッションなど、足りてない領域はアンカンファレンスで補完できたので、採択の傾向と合わないような話はアンカンファレンスで盛り上げていくのがバランスが良いような気がする。
見渡してみると、僕のようなオープンソースSwiftにまつわるレギュラートークは今年はなかったので、ある程度の独自性を保てていたと思う。今後もこの領域で食っていきたい。
次回予告
11/1(Sat.)のKotlin Fest 2025でもトークをすることになりました 🎉
iOSDCの準備が終わって早々、また次のトークの準備をしないとならないけど、全く新しいコミュニティでのトークなのでわくわくしています。乞うご期待!
*1:CFPを出すときもサービス名は意図的に伏せるなどのハックをしがち