5.1さらうどん

@giginetの技術ブログ。ゲーム開発、iOS開発、その他いろいろ

GlobalGameJam札幌で48時間でゲーム10本開発した話

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1月25日から27日までの3日間、48時間でゲームを作るお祭り、GlobalGameJamが世界同時に開催されました。

Global Game Jam 2013札幌開幕します - 5.1さらうどん

ルールは簡単。テーマに沿って48時間でゲームを作るだけ

僕がオーガナイザーを務めさせていただいた札幌会場では60名が9つのチームに分かれ、10本のゲームを開発しました。

2013年のテーマはこちら。

例年、動詞や画像だったテーマが史上初の音になり、大変着想しにくかったのではないでしょうか。

また、当日は、テーマの他に、ある要素を盛り込んだゲームを評価する「実績」が16種類発表されました。
Global Game Jam 2013 Diversifiers | Global Game Jam


以下、札幌会場で開発されたゲームを、当日の紹介順にお届けします!

チーム4『菌GDOM』

Game: Ritohyou Ryuutar Browser Game for GGJ2013 Sapporo (RRBG) | Global Game Jam

1番手はソーシャルゲー。サーバーサイドはRuby、クライアントサイドはCoffeeScriptで実装されています。

細菌パズルの『菌GDOM』。

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白血球を操り、増え続ける細菌を撃破せよ。

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スタートダッシュが決められず、企画会議が難航、そのため惜しくも上手く形にできなかったようです。

企画はおもしろい物が練り上がっていたと思うので、完成に期待。

チーム9『BEAT DETECTOR』、FC『かわずたん』

チームとは名ばかり。一人GGJに挑戦したチーム9。せっかく一人だから2本作ろうという発想に至ったようです。この時点で何かがおかしい。

1本目は『BEAT DETECTOR』。ゲームを4KB以内にする実績「ATARI AGE」の解除を狙って、アセンブラだけで実装されています。なんと僅か2.6KB

Game: BEAT DETECTOR | Global Game Jam

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プレイヤーのやることは鳴り響くビープ音を1Hz単位で的中させるだけ。調律師を目指すためにオススメの作品。

ちなみにこのゲーム、黒、灰、白の3色のみ使用。「True Colors」の実績もまとめて解除されています。

2本目はFC『かわずたん』。なんと、完全なハンドアセンブルにより、1からファミコンゲーとして実装されています。

Game: FAMICOM-NES REGENERATION PROJECT | Global Game Jam

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海外のオープンソースのFC向けコンパイラを利用した模様。実機やファミコンエミュレーターでしっかり動きます。変態だー。Kawazのマスコットキャラクター、「かわずたん」もファミコンパレットでしっかり再現。

ゲーム自体はランダムにやってくる弾を避けるだけのクソゲー(褒め言葉)。開発時間のほとんどが調べ物に費やされたようで、変態的技術力に頭が上がりません。

チーム1『団結!トロッコ君』

ソーシャルゲー、FCゲー、とまともじゃないプラットフォームの作品が続く中、なんとこのゲームはiPhone3台とiPad1台が必要なパーティーゲーム

タイトルは『団結!トロッコ君』。

Game: 団結!トロッコ君 | Global Game Jam

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iPhoneで操るトロッコ役3台と、iPadを使ったナビゲーター役の4人に分かれて遊びます。

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iPhone側の操る画面はご覧の通り。自分の周囲しか見ることができません。

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その一方でiPad側の画面。マップ上の広い範囲を見渡すことが可能。さらにナビゲーター役はiPad上の岩をタップして破壊することで、トロッコの道を作ることも。上手く他のプレイヤーを誘導してたくさんコインを集めよう。

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4人の団結力が物を言う作品。実際に遊んでみると、道案内をする方が必死なわりに、結局変な道に誘導してしまう、なかなか楽しい作品に仕上がったかと。

WiiUのような非対称のゲームプレイが流行なので、技術的にちょっとムリしてBluetoothによるP2P通信に挑戦。48時間でプレイ可能な領域に持っていくのはなかなか大変でスリリングでした。

4人以上のパーティーゲームにする実績、「More the Merrier」、2つ以上のデバイスを使う実績「Two Are Better Than One」もまとめて解除。

この作品のメインプログラマは僕なので、後日、詳細な開発レポートを上げたいと思います。

チーム4『イチの、みち』

Game: イチの、みち | Global Game Jam

紹介から5本目にしてようやくオーソドックスなゲームの登場。C++/DirectXで実装。

謎の生物、イチが音を集めるパズルゲーム。『イチの、みち』

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プログラマが3人いるから単純に3本作ろう!ということで3種類の音を集めるパズルゲームが実装されています。

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それぞれ、R,G,Bの三色が鍵となっており、色を手がかりに音を集めましょう。

主人公のイチがかわいい。幕間の絵本のようなシナリオも特徴的です。

チーム7『Encounter』

大量の3Dモデラーによって構成されたチーム。『Unfinished Swan』のような雰囲気を持ちつつ、『LSD』のようなシュールな探索ゲーを目指そう、というコンセプト。

Game: Encounter | Global Game Jam

心臓の鼓動から、出会いのときめきを発想。タイトルは『Encounter』。広い世界であなただけの出会いを。

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初心者モデラーが多く、ローポリというのが功を奏して、広大なマップに様々なオブジェクトを配置することに成功。広い世界を演出できていたように思えます。

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そしてエンディングのカワセミ。クォリティの高いカメラワーク。

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GGJという過酷な環境で作られたとは思えない、とても心休まる作品に仕上がっています。

チーム3『MOMOTARO』

Game: MOMOTARO | Global Game Jam

期待のガチプロ班。本職の映像屋4名の他、プロのゲームサウンド屋、そして『ギルティギア』などを手がけたアークシステムワークスのCTO氏までが参戦したドリームチーム。

タイトルは誰もが認める日本のヒーロー『MOMOTARO』。墨絵のような色彩を捨てた質感が美しい。

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ワンダと巨像』のような圧倒的な鬼の威圧感。高まる鼓動と絶望感。

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攻撃範囲はマップの半分以上。桃太郎は鬼を打ち破れるのか。

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日本の全作品でトップを取るのは通過点。ガチで世界を取りに行くような作品を作る!という目的で開発された本作ですが、惜しくも完成には至らず……!

もし、プログラマが一人増えていれば、世界に名を馳せる作品が完成していたかもしれません。

メイキングや事の顛末はこちらを参照のこと

GGJ2013、UnityとBlenderで世界に挑む。 - うしろぐ

チーム5『かくしんぼ』

Game: Kakushinbo | Global Game Jam

『かくしんぼ』。C# XNAで実装。隠す側と探す側に分かれて遊ぶ宝探しゲーム。

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まず、隠す側が宝箱をマップ上のいずれかの穴に隠します。あとは探す側がどこに隠したかを当てるだけ。

右下のハートは、隠した側の心理状態で、隠れている穴に近づくと心拍数が上がってドキドキ。

少ない手数で上手く隠している場所を当てましょう。

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隠した側と探す側との心理戦に発展するのもまた楽しい。

あえて意図的にチート可能な要素を含む実績「No cheating (please)」も解除。

チーム2『ETERNAL MARCH』

Game: Eternal March | Global Game Jam

チーム2の『Eternal March』。Javaで実装。

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基本はオーソドックスなスネークゲームにスキルの概念を追加。

白雪姫やアリスなど、童話をモチーフにしたかわいらしい世界観が特徴です。

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細かいですが、昔ながらのアルファベット3文字のネームエントリーを採用。こういう細かいこだわりがたまらない。

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プロのプランナーさんがチームをまとめただけあって、シンプルながら完成度の高い作品に仕上がっています。

チーム8『カルテットウォーリア』

Game: カルテットウォーリアー~QuartetWarrior~ | Global Game Jam

トリを飾ったのはチーム9同様に一人チームによる『カルテットウォーリア』。「I wanna be the guy」などを産んだMultimediaFusionというプログラミング不要のゲームエンジンで開発されています。

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心臓を舞台に、4つのゲームを選べます。いきなりボスにも挑戦可能。
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オーソドックスな縦シューティング。上手くクリアして素材を集めよう。

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素材が集まったらボスに挑戦。撃破できればゲームエンド。

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総括

札幌会場では9チーム10本の作品が開発されました。

今年はUnityが大流行。世界的には、作られた作品3000本のうち、1000本以上がUnity製。一方で札幌会場はUnity作品は2本だけ。

iOSネイティブやソーシャルゲーム、MultimediaFusionやまさかのファミコンゲーまで、さまざまな開発環境で開発され、バラエティに富んだ会場になったと思います。

また、不可能と思われた実績が5種類も解除されたのも大変興味深かったです。

来年は期待のプラットフォームOUYAが一般発売されたりするので、新しいコンソールをどんどん取り入れていければなぁと思っています。

札幌会場は、運営の札幌ゲーム制作者コミュニティKawazの存在もあり、日頃からゲーム開発技術が共有されており、どのチームも完成度の高い作品に仕上がったと思います。

また、作品以外にも今年は北海道新聞に大きく取り上げられたりと、飛躍の年となりました。

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この記事を読んで、少しでもGGJにご興味を持った方、是非とも来年ご参加ください。素晴らしい体験を約束します。